【01】ぱおぱおと一張羅と赤ちゃん

 

その日は、良い天気だった。

気分が良かったわたしは、一張羅として買ったアウターをおろして都内に一人で買い物に行った。

一張羅は、自分にとってはめちゃくちゃ高かったけど、着心地もシルエットも良くて、買って良かったな〜と思った。

 

帰り

夕方頃、帰ろうと電車に乗ると満員だった。

手も上にあげられないほどの超満員で、ポケットからスマホを出すこともできなかった。

満員電車に苦しんでいると、外国人の親子が乗ってきた。

お母さんが幼い赤ちゃんを抱っこしていて、赤ちゃんの顔がちょうどわたしの目の前にきた。

スマホもいじれないので、赤ちゃんの様子を見て癒されていると、最悪な社内環境のせいか、赤ちゃんがグズりだしてしまった。

大人のわたしだって泣きたいこの環境。

赤ちゃんが本当にかわいそうだった。

お母さんもすごく困っていたけど、満員で手も上にあげられないわたしには何もできなかった。

 

お母さんがわたしに向かって、
申し訳なさそうにアイコンタクトしてきたので、

「OK、OK!気にしないで!」とアイコンタクトした。
伝わったかはわからない。

 

赤ちゃんに向かって、ちょっと変顔とかしてみたけど、全然こっちを見ていなかった。

 

わたしには何もできない。

ので、寝た。

満員なのをいいことに、人に寄りかかって、寝た。

 

目覚め

どれくらい寝てただろう。

ふと目が覚めた。

 

あの親子はどうしたかな、と思って顔をあげるとまだ目の前にいた。

ちょっと前まで泣いていた赤ちゃんが、ニコニコしていてかわいかった。

何かを美味しそうに食べていたので
おやつをもらってご機嫌になったんだな〜
良かったね〜!と思って口元を見ると

見覚えのあるもの…

赤ちゃんがもぐもぐしていたもの。

それは、その日おろしたばかりの
わたしの一張羅だった。

 

つづく



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